犬のアレルギー症状と治療について

人間だけでなく、犬でも深刻な問題になっているアレルギー疾患。

ペットフード会社“ペットライン㈱”の調査では、およそ3割の犬に何らかのアレルギー症状があることがわかっています。

ここでは、犬に生じやすいアレルギーの種類と症状、治療法や、アレルギーの改善・予防法などについて詳しく説明します。

1.アレルギーとは

そもそも「アレルギー」とは何でしょうか?

生物には自分の命を守るため、自分にとって「良いもの」と「害のあるもの」、そして「影響のないもの」を識別しています。

そして、「害のあるもの」…病原菌や異物などの“抗原”を排除するための“免疫反応”というシステムを持っています。

免疫反応では、抗原が体内に侵入してくると、これに合った“抗体”を作り出して排除していくのですが、このときに炎症を起こしてより多くの抗体を作ったり、呼び寄せたりします。

熱が出たり患部が腫れたりするのは、免疫反応によるものなんですね。

免疫機能

ところが、この免疫システムに異常がおこると正しく“抗原”を識別できなくなってきます。

このうち、自分にとって「良いもの」「影響のないもの」まで抗原と認識して抗体を作り出し、炎症を引き起こしてしまうのが「アレルギー」です。

花粉、ハウスダスト、食べ物など、本来なら健康への影響がなくても、一度抗原と認識してしまうと免疫は反応し続けてしまうのです。

この“認識”については、ある特定の物質を体内に取り込み続け“ある量”を超えたところでアレルギーを発症するという理論があります。

簡単にいうと、例えば花粉なら、体内に“花粉の許容量”というバケツがあって、これが溢れるまで花粉を取り込んでしまうと花粉症になる…というイメージです。

このバケツの大きさは個体によって違いがあり、そのために同じ物質でも反応に差があるのだと考えられています。

また、免疫システムを制御する物質のバランスが崩れることも、アレルギーの原因になると考えられています。

これについては後述しますね。

2.アレルギーの種類

では、犬はどのようなアレルギーを発症するのでしょうか?
原因や症状、具体的な治療法について、見ていきましょう。

2.1.食物アレルギー

原因

アレルギーの多い食材

食べ物に含まれるたんぱく質に反応してアレルギーを発症するものです。

発症しやすい食材は、牛肉、乳製品、鶏肉、小麦、大豆の順となっており、ドッグフードの原料となる物質も多く見られます(2015年、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学:ドイツ)。

前述の“バケツ”の例のように、同じドッグフードを食べ続けると発症の可能性が高くなる、という指摘もあります。

症状

比較的早い段階(1歳程度まで)で発症するケースが多いようです。

アトピー性皮膚炎との識別が難しい面もありますが、食物アレルギーの場合は食材と接触する口や消化器系での異常が出やすいという傾向があります。
例えば、口の周囲の赤みや発疹、慢性的な下痢などの症状です。

他には、目のまわり、耳の奥、背中などの炎症が季節に関係なく見られることが多く、嘔吐するケースも見られます。

治療

アレルギーを起こしている食材を与えない…これが一番の治療です。

でも、ドッグフードには何種類もの食材が配合されていて、どれが原因だかわからないですね。

そこで、行われるのが、「除外診断」です。

獣医師の指導のもと、アレルギーの疑いがある食材を外した食事(いわゆる除去食)を与えて反応を診る…というものです。

この除去食だけを1~2か月与え、症状が消えれば食物アレルギーと診断されます。

また、治癒しないまでも改善が見られる場合は、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の混合型、変わらなければアトピーの可能性が高くなります。

除去食は1種類の食材だけでなく、可能性が高い複数の食材を除いたドッグフードの場合もあるので、どの食材がアレルギー物質なのかを特定できないこともあります。

一方で、「アレルギー物質が何なのか特定したい」という場合には、血液検査が行われます。

検査費用が3万~7万円と高額ですが、原因物質が特定できるので、どの食材を与えなければ良いかの対策が容易
です。

原材料表示を確かめて、アレルギー物質を含まないフード(除去食)を買い与えるようにしてください。

除去食は動物病院で指定されたものや市販のもの、アレルゲンフリーの完全除去食やアレルゲン分解物などありますが、どれが適しているかは犬のアレルギーの程度によって異なります。

軽度であれば、同じ牛肉でもある程度分解された状態になっていれば反応しませんし、重度であれば、分解物がほんのちょっと混入しただけでも反応が起こってしまいます。

獣医師に相談し、どの食事が適しているのか指示を受けましょう。

なお、食事だけでなく、犬に与えるすべてのもの(おやつ、飲み物)などにも気を配ってください。
除去食を与えていても、うっかりアレルギー物質の入ったおやつを与えてしまったら、初めからやり直しです。
家族全員の理解のもと、治療をすすめるようにしましょう。

また、除去食を与えていれば症状が治まりますが、完治したわけではありません。アレルギー物質を与えれば、また症状が出てしまいます。
改善されるケースもありますが、一生続くと考えて、気長に食事管理を続けましょう。

2.2.アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は発症例が多く、他のアレルギーがあると併発しやすいとされています。
食物アレルギーとの混合型も50%程度見られるという報告もあります。

犬は被毛のために皮膚の異常を発見するのが難しく、進行してから発症に気づくケースも少なくはありません。
このため、炎症を鎮めるのに時間を要することもあります。

原因

アトピー性皮膚炎はアレルギーによって起こる皮膚炎の一種です。
発症には遺伝的要因のほか、ダニ、ハウスダスト、カビ、花粉なども関係していると考えられていますが、原因はよくわかっていません。

発症時期が3才くらいまでに多いのが特徴で、特にこれらのアレルギー物質に接しやすい室内犬の方が発症しやすいといわれています。

また、犬種によって差があることがわかっており、柴犬、シーズー、シェットランド・シープドッグ、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ウェスト・ハイランド・ホワイトテリアなどは発症しやすい犬種です。

症状

腹部や足、顔などの皮膚に赤みや発疹などの症状が現れ、激しい痒みを伴います。

初期では部分的ですが、掻きむしったり、舐め続けたりすることで症状が全身に広がってしまいます。
放置すると化膿したり、舐めすぎて肉がめくれてしまったりと悪化することもあります。

治療

痒みや炎症を抑えるための投薬治療が中心です。
具体的には、抗ヒスタミン薬、湿疹などの皮膚炎症を抑える塗り薬、セラミドなどの保湿剤などです。

抗ヒスタミン薬とは、アレルギー症状を起こす主な物質“ヒスタミン”が作用しないようにブロックする薬です。
副作用がなく、症状を緩和することができますが、有効性が低い(効かない犬が多い)のが難点です。

そこで、治療の主力となるのが“塗り薬”です。
アトピー性皮膚炎は痒みが強く、これを鎮めないと犬が掻き壊してどんどん悪化してしまいます。この痒みや炎症を鎮めるのに有効なのが“ステロイド薬”です。

ステロイドは体内で合成されるホルモンの一種ですが、副作用があることが知られています。短期間の使用では、水を欲しがったり、傷が化膿しやすくなったりなどが見られます。

しかし、ステロイドの有効率は100%。
どの犬にも効果があるのが強みです。

ステロイドには様々な強度の薬があり、獣医師の指示に従って適切な薬を正しく使えば、いちばん早く症状を抑えることができます。
副作用があるからと怖がらず、使用法を守って使うのが治療の近道です。

一方で、アトピー性皮膚炎の犬は皮膚のバリア機能が衰えていて、ちょっとした刺激にも反応しやすくなっています。

そこで、治療と並行しながら保湿剤を使って皮膚を守ってあげましょう。
動物病院でも販売していますし、愛犬に合うなら市販の保湿剤やオイルを用いても構いません。

同様に、皮膚を清潔に保つことも炎症を軽減するのに効果的です。
低刺激性のシャンプーを使い、優しく洗い流してあげましょう。

新しい治療法

アトピー性皮膚炎の治療には、新しい技術も用いられています。

その1つが、「インターフェロン療法」です。

アレルギーの発症には免疫バランスの乱れが関係するという理論に基づき、これを改善する“インターフェロン”という薬を投与する方法です。

これも副作用がないのですが、効果が見られない個体もあります。
また、週に3回注射し、有効かどうかの確認に1か月かかるという難点もあります。
ステロイド薬を併用し、効果があればステロイド薬を減らしていくのが一般的です。

もう1つの治療法に、「減感作療法」があります。

これは、特定のアレルギー物質(ダニなど)が原因だとわかっている場合に行われます。
その物質をほんの少しずつ体内に入れ、徐々に体を慣らすことで最終的にアレルギー反応を起こさせないようにするというものです。

治療は、週1回ずつ6回注射する方法が主流です。
減感作療法は、前述のような対症療法ではなく、現在のところ唯一の根本的治療です。原因が明らかな場合は試してみる価値はあると思います。

2.3.ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー

犬・猫などに多く見られるノミ。なかなか厄介なものです。

屋外では野良猫などを中心に、ノミが多く生息しています。
このため、外飼いの犬に多く見られますが、室内犬も散歩に行った際にもらってきてしまうこともあるため、注意が必要です。

原因

ノミの唾液やフン・死骸などが犬の体内に取り込まれて起こるアレルギー性皮膚炎のことです。
アトピー性皮膚炎と同様に発症例が多く報告されています。

症状

背中、腰、おしり、しっぽの付け根など、ノミが寄生しやすい部位にアレルギー反応が起き、発疹やかさぶたができて激しい痒みがみられます。

ノミ自体が見つからなくても、皮膚近くに黒い点のようなフンがあれば、ノミが寄生している可能性が高いです。

治療

痒みを抑える治療と並行して、ノミの駆除を行います。

市販品も多く売られていますが、いちばん確実で即効性があるのは、動物病院で処方される“皮膚に垂らすタイプの薬”です。
ノミの成虫だけでなく卵や幼虫の発育も阻止できるので、短期間で効果をあげることができ、おすすめですよ。

痒みを抑える薬には、アトピー性皮膚炎と同様にステロイド薬が用いられます。
獣医師の指示に従って、正しく適切に治療しましょう。

アトピー性皮膚炎と違い、ノミを除去すれば症状は治まります。
治療と同時に犬小屋、室内犬ならソファ、カーペット、布団、ぬいぐるみなども徹底的に掃除しましょう。日光に当てたり、防ダニ・ノミ剤を使ったりするのも良いですね。

以前は春~夏にノミが多く発生していましたが、最近は暖房などで冬でも温かく一年中見られます。
油断せずに清潔と駆除を心がけましょう。

3.改善・予防の方法

アレルギー疾患は獣医師に相談して治療を進めるのが一番です。
しかし、アレルギーの原因が明らかになっていないこともあり、根本的な治療には至らないのが難しいところです。

動物病院での治療のほかに、愛犬を守る方法はないのでしょうか?
ここでは家庭でできる改善・予防についてまとめました。

医学的なデータもある方法ですが、治療中の場合は獣医師に相談の上、実施してみてください。

3.1. プロバイオティクス

善玉菌

アレルギーの発症には免疫バランスの乱れが関係していることは、前に述べました。
このバランスを改善するのに、腸内に棲みつく善玉菌(プロバイオティクス)が関係していることがわかっています。

そこで、犬に善玉菌のエサとなる物質を与え、善玉菌を活性化する方法が注目されています。

善玉菌のエサには、乳酸菌などの菌体・食物繊維が最適ですが、肉食性のある犬に大量の食物繊維は負担です。
乳酸菌入りのドッグフードやおやつ、ヨーグルトなどを与えると良いでしょう。
ただし、食物アレルギーの犬は原材料に注意してください。

食べ物で難しい場合は最近登場している腸内ケアする犬用のサプリメントも良いです。
腸内ケアはアレルギーだけでなく、老化対策としても有効なため、色々な商品が登場しています。

活力や免疫力をアップさせること、腸内ケアをすることの2つのタイプが主流です。

腸は身体の免疫力の大半を司る器官であることが近年判明しています。

なので、老化対策として腸内ケアをサポートするサプリメントが多いんです。
出典:犬の栄養サプリおすすめランキング!

3.2. 脂肪酸

最新の研究で、アトピー性皮膚炎の犬に「オメガ3脂肪酸」を与えると、炎症や痒みが減少することがわかりました。

オメガ3脂肪酸は緑黄色野菜や魚などに多く含まれますが、これらを配合したドッグフードやサプリメントの方が与えやすいかもしれませんね。

3.3. 抗酸化物質

抗酸化物質には抗炎症作用があり、アレルギーを抑えるのにも有効と言われています。

ビタミンA、C、Eなどは比較的摂取しやすい抗酸化物質で、ドッグフードに配合されていますが、アレルギー疾患の犬は消費量が多いので、サプリメントなどで補ってあげるのも良いでしょう。

ただし、過剰摂取による健康被害もありますので、量を守って与えてください。